星野源、紅白歌唱変更を発表。一体何があったのか?
2024年末のNHK紅白歌合戦で、出演予定だった星野源さんが歌唱曲の緊急変更を発表されました。
当初は「地獄でなぜ悪い」を歌う予定でしたが、SNS等での批判の声を受けて別の楽曲、「ばらばら」を弾き語りすることに。
この変更の背景には、楽曲と映画との関連性、そして社会的な問題との関わりが複雑に絡み合っています。
楽曲発表から変更発表の流れは?
12/23、星野源公式SNS他各種メディアで、『第75回NHK紅白歌合戦』で楽曲「地獄でなぜ悪い」を披露することを発表。
発表直後から、SNS等では賛否の声が多数挙がりました。
星野源さんに問題があるのではなく、この楽曲が問題視されている映画「地獄でなぜ悪い」と同名のテーマソングとして作られた楽曲だからです。
映画「地獄でなぜ悪い」は、複数の性加害疑惑の告発をされている映画監督・「園子温」監督による作品です。
また楽曲発表とあわせて、星野源はこの選曲が「NHK制作チームからの強い要望によるものである」ことを明かしていました。
12/26、星野源の歌唱楽曲変更が発表される
この問題に対しての対応は、(少なくとも私が予想していたよりも)素早い対応で行われました。
この楽曲変更に際しては、星野源公式サイドより、元々の楽曲選定に至る経緯や、今回の変更に至るまでの事態の認識・考え方などが非常に語られています。
こちらについては、ぜひ出典元で全文を読んでいただきたいです。
・日刊スポーツ「星野源、紅白歌合戦の歌唱曲を「地獄でなぜ悪い」から「ばらばら」に変更/NHK発表全文」
https://news.line.me/detail/oa-nikkansports/sxitjozg66po?mediadetail=1&utm_source=line&utm_medium=share&utm_campaign=none
星野源公式発表の概要
簡単な概要としては、
・楽曲は星野の個人的な経験・想いをもとに執筆されたものであり、映画の内容や監督とは関係がない
・一方でのちに性加害疑惑を報道された人物が監督した映画の主題歌であること、映画タイトルにある「地獄」というワードにヒントを得たこと、映画タイトルと同名の楽曲であることもまた事実
・この曲を紅白歌合戦の舞台で歌唱することが、二次加害にあたる可能性があるという一部の指摘について、私たちはその可能性を完全に否定することはできません
といった内容の他、闘病経験を経て生まれた楽曲で苦しい時代を生きる方々を勇気づけてほしいというNHK側の意図、加えて「私たちは、あらゆる性加害行為を容認しません。」という強い言葉が語られています。
楽曲「地獄でなぜ悪い」はどんな曲?歌詞の内容は?
「地獄でなぜ悪い」は、星野源さんが2012年にくも膜下出血で倒れ、その闘病中に作詞作曲した楽曲。歌詞は、病床での苦しみや葛藤、そして生きる喜びなどが表現されたもので、多くのリスナーから共感を得ています。
またこの楽曲は同映画にも出演する星野源に、園監督からのオファーを受けて書き下ろした曲とも言われています。
ライブでも演奏される人気曲の一つで、直近ではROCK IN JAPAN やVIVA LA ROCKなどの巨大音楽フェスでも演奏されており、特に封印された楽曲とはなっていません。
星野源の闘病中の様子については、自著「蘇る変態」等で詳しく語られています。
いうまでもなく松田優作主演映画『蘇える金狼』を元ネタとしながら、大病からの復活を語った力作です。
映画「地獄でなぜ悪い」はどんな映画?あらすじは?
映画「地獄でなぜ悪い」は、園子温監督の作品で、2013年に公開されました。
獄中の妻を喜ばせるため、ヤクザの組長が娘主演の映画製作に乗り出し、そこに巻き込まれた人々の幸不幸を描いたもの。
星野源は二階堂ふみ演じる組長の娘と恋人のフリをしたことからどんどん事件に巻き込まれていく若者の役で出演していました。
※ネタバレになってしまいますが、星野源演じる役の退場シーンは必見です。
※グロテスク・バイオレンスや過激な表現も含まれているので視聴にはご注意を。
映画「地獄でなぜ悪い」はなぜ問題視されているの?園子温監督はなぜ訴えられているの?
この作品を監督して園子温監督は、自身の作品への出演を条件に女性の俳優らに性的関係を迫ったという報道が出て依頼メディアへの露出が減少していました。
彼自身の性加害の疑惑については裁判を通じて争われたこともありましたが、被害を訴えていた女優・千葉美裸さんが自殺をしたこともあり、園監督の行動や映画への制作姿勢等を問題視したり、上映を嫌う声が多く見られるようになりました。
おりしも韓国の有名映画監督、キム・ギドク氏が同様に撮影中の性加害による告発・敗訴を経て作品が上映中止される出来事などもあり、園監督の作品を扱うことには強い批判の声も出るようになっていました。
SNSの反応と個人的感想
今回の楽曲変更に対して、SNSでは賛否両論が交わされています。
「作品に罪はない」「いきすぎたキャンセルカルチャー」「表現の自由を狭める」と変更に否定的な意見がある一方で、性加害やその二次被害に配慮した楽曲変更に肯定的な意見もあります。
ここからは個人的な感想を書きます。(星野源ファン、というバイアスもあると思うのでご了承ください)
正直、NHK制作側が「地獄でなぜ悪い」を紅白の楽曲として指定したことには驚きや疑問もありました。
この楽曲の性質上、今回のような批判の声が出ること(またそれらが直接星野に向かうこと)はそれほど想像に難くなく、また先に挙げたようなタイアップの性質上、同氏の代表曲としてマスメディアで歌われてきた曲でもないからです。
星野源はNHKの番組に多数出演しており、特に自身がMCも務める「おげんさんといっしょ」では他アーティストとのコラボも含めて多様な楽曲が演奏され、同曲の披露としてはこれらの番組の方が自然ではないかと思いました。
そしてこの変更、発表が迅速に行われたことに再度驚きました。
星野源公式からの、事実だけでなく今回の経緯や問題への認識・態度を明確に示す文面は炎上対応のお手本とも言えるレベルの内容であり、また楽曲変更だけでなく代替の楽曲発表までされる判断の速さはなかなか真似できるものではありません。
星野源はかねて、キャンセルカルチャーの文脈に独自見解を示していました。
それは(自作も含め)過去に発表ついた作品について、現時点での社会状況や様々な意見を考慮して向き合い直す姿勢を重んじていたアーティストであり、今回の迅速な判断はそうしたベースがあってこそのものと考えています。
付け加えると、この問題について「二次加害」という言葉が使われるのは個人的に違和感もあります。
「加害」をしたのは園子温監督やその協力者であり、星野源やNHKに加害者としての側面はないと考えているからです。
(映画「地獄でなぜ悪い」の現場において性加害があったのだとすれば、そこに出演していた星野源が何らかの関わりをもっていた可能性はゼロにはできませんが、そのような事実はきいた事がありません)
代わりに歌われる「ばらばら」はどんな曲?
「ばらばら」は、星野源さんのソロデビューアルバム「ばかのうた」に収録されている一曲です。
「世界はひとつじゃない」「ばらばらのまま世界は ひとつになれない」という歌詞が印象的で、発表から10年を経た今でも..この分断の時代だからこそ、感じさせられるものもある名曲です。
同アルバムはバンドSAKE ROCK在籍中に発表され、彼の音楽キャリアにおいて重要な転換期となった作品でもあります。
個人的には好きな曲でもあり、この曲がメジャー番組で演奏されることには喜ばしく思います。
(もっと言うと、楽曲的はYellow dancer以前と以後の星野作品はまったく別の性質のもので、特にエピソードあたりまでの曲が自分の思う「星野源のうた」だったりします..初期曲を聴いたことがない方がいれば、ぜひ聴いていただきたいです)
また変更後の楽曲が「ばらばら」ということに、SNSでは「すばらしいアンサー」と称賛する声が挙がっています。
個人的にはこの「アンサー」は、「変更を強いられるのは納得が言っていない」ということではなく、単に世界が「ばらばら」であること、その悲哀を示すものと感じています。
この辺りの経緯も、紅白歌合戦で語られるのでそゆか。
いずれにしても、今回の騒動から楽曲変更、そして本番のパフォーマンスに至るまで、彼の音楽人生を語る上で必見のものになると期待しています。
下北余談
ここからは完全な余談で…
下北沢に「アンドレア」という有名クレープ店があります。
芸能人も多く訪れる名店で、訪れた方々の写真・アルバムが置いてあります。
先日そこで若き頃の星野原を発見..
劇団大人計画で俳優として活動されていた頃と思われ、同劇団の少路勇介氏とともにクレープを頬張る姿が激写されていました。
この髪型の頃、懐かしい…必見ですのでぜひ現地でご確認を。
クレープも安くて美味しいのでおすすめです。